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公正証書遺言のメリットとデメリット

はじめに

遺言には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」「危急時遺言」がありますが、主には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」が使用されています。

自分で書き記して残しておく遺言は「自筆証書遺言」であり、「公正証書遺言」とは、公証役場で遺言者が遺言を公証人に伝えて、公証人がその内容を文章にまとめて作成するものです。

 

公正証書遺言のメリット

①公証人のチェック

遺言の内容や要件について不備がないかどうか、公証人によって次の点がチェックされることで遺言の執行がスムーズに行われます。

・相続に関すること

・財産処分に関すること

・身分に関すること

・遺言執行に関すること

・配偶者居住権に関すること

・その他、祭祀主宰者の指定など

 

②遺産分割手続きは必要ない

遺言書に記載したとおりに相続されるために、遺産分割手続きは必要ない旨の記載があるかどうか確認しておきます。

 

③「検認」がいらない

 

④遺言者の意思、能力の確認

意思能力が欠けてないことが保証されます。

 

⑤原本の安全な保管

公正証書遺言の原本は作成された公証役場で保管されます。保存期間は、公証人法施行規則によって20年となっていますが、特別の事由のある間は保存しなければならないと定められていますので、遺言公正証書については、いわば半永久的に保存されたり遺言者の生後120年間保存されたりしています。

公証役場に保管されているため、破棄されたり隠されたり改ざんされたりすることがありません。また、1989年(平成元年)以降に作成された公正証書遺言であれば、天災等に備えてデータとしても登録されています。

 

⑥秘密の保持

相続が発生するまでは本人以外に開示されることはありません。

ただし、自筆証書遺言でも、遺言書保管法によって保管された場合は秘密が保持されます。

 

⑦自筆証書遺言は無効となる恐れがある

自筆証書遺言については様式があり、全文及び作成した日付と署名を自書し、押印しなければなりません。加除訂正にも一定の要件があります。

公正証書遺言は公証人による様式のチェックがあるので、このような問題がありません。

 

公正証書遺言のデメリット

①作成手数料がかかる

例えば、総額1億円の財産を妻1人に相続させる場合の手数料は4万3,000円ですが、妻に6,000万円、長男に4,000万円を相続させる場合には、妻の手数料は4万3,000円、長男の手数料は2万9,000円となり、その合計額は7万2,000円となります。ただし遺言加算という特別の手数料があり、1通の遺言公正証書における目的価額の合計額が1億円までの場合は、1万1,000円を加算するとなっているので、7万2,000円に1万1,000円を加算した8万3,000円が手数料となります。

公証役場で保管する場合、遺言書保管の申請手数料が3,900円かかります。

 

②作成のために手間と費用がかかる

本人の印鑑登録証明書や戸籍、相続人の住民票、財産関係の登記事項証明書や預貯金通帳、固定資産評価証明書といった諸々の書類が必要です。

公証人と打ち合わせをして文案を作成し、証人2名の立会いのもとで公正証書遺言が作成されます。

 

おわりに

自筆証書遺言を自分で整えて書き残したとしても、何らかの様式ミスとか保存の仕方といったことで自分の意思をきちんと伝えることができなければ、遺言を書いたとしても無駄になります。その点、公正証書遺言であれば、公証人という専門家によって不備のないように遺言が整えられ、保管についても心配ありません。

公正証書遺言はお金はかかりますが、正確で安全な遺言を残すことができる仕組みのようです。

 

《参考》日行連 中央研修所 研修サイトより

「遺言・遺言執行・死後事務委任等について」神田公証役場 公証人 小島 浩