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自筆証書遺言について

はじめに

自筆証書遺言とは、読んで字の通り、自分で書き残す遺言のことです。

自分で自由に書いて良いというものではなく、民法に定める方式に違反する遺言は無効となってしまいます。

自筆証書遺言の法的要件

自筆証書遺言をする場合には,遺言者が,遺言書の全文,日付及び氏名を自書して,これに印を押さなければならないものと定めています。

2018(平成30)年の民法改正により自筆証書に「財産目録」を添付するときは,その目録についてはパソコン等で作成してもよいことになりました。ただし、財産目録の各頁には署名押印をしておかなければなりません。

遺言内容を加除訂正することはできないことはありませんが、かなり厳密にしないといけないので、新たに書いた方がいいようです。

法務省により「遺言書の様式の注意事項」(http://www.moj.go.jp/content/001318459.pdf

が示されています。

 

第968条 

自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

 

遺言書保管制度とは

平成30年に「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(遺言書保管法)が成立し、令和2年7月10日より施行されました。この法に基づき法務局において自筆証書遺言の保管制度が始まりました。

 

第一条 この法律は、法務局における遺言書(民法第九百六十八条の自筆証書によってした遺言に係る遺言書をいう)の保管及び情報の管理に関し必要な事項を定めるとともに、その遺言書の取扱いに関し特別の定めをするものとする。

第二条 遺言書の保管に関する事務は、法務大臣の指定する法務局が、遺言書保管所としてつかさどる。

 

《概要》

遺言書保管所(法務局)の遺言書保管官に対して、遺言者自らが封をしてない自筆証書遺言の保管の申請をします。この制度では、家庭裁判所による検認の手続が不要です。保管された後でも、遺言者のみが遺言書をいつでも閲覧でき、また、撤回することができます。遺言書の遺言書保管所における保管期間は、出生の日から120年間とされています。

遺言書の紛失や隠匿などが防止され、遺言書の存在の把握が容易となります。

《相続開始後》

遺言者が死亡した場合、相続人・遺言執行者等は遺言書保管事実証明書によって遺言書が保管されているかどうかを確認します。

遺言書が保管されていれば、遺言書情報証明書によって遺言の内容証明書を取得できます。相続人等は、保管されている遺言書(モニターによるか原本か)の閲覧をすることができます。

《関係遺言書保管通知》

遺言保管所に保管されている遺言書について、誰かが遺言書情報証明書の交付を受けたり、遺言書を閲覧した場合に、遺言書保管官は、他の相続人に対して遺言書を保管していることを通知する制度です。これによって遺言書の存在が関係する相続人等に知られるわけですが、誰もこのようなことをしない場合には、遺言書があること自体を知ることができません。

《死亡時の通知》

遺言書保管官が遺言者の死亡を確認した場合、遺言者があらかじめ指定した者に対して、遺言書が保管されていることを通知することとなっています。

 

おわりに

自筆証書遺言は、民法の定める方式はありますが、自分で書いて自分で保管しておけばよいという簡便でお金もかからない方法です。しかし、保管の方法が難点でしたので、その点を国としてきちんとして制度として整えたのが遺言書保管制度ということです。

今後、高齢化に伴って相続(=争続)の問題が大きくなることが予想されますが、使いやすく信頼のおける自筆証書遺言が普及することで、穏当な相続になるとよいと思います。