裁定制度と登録制度
【1】裁定制度とは
他人の著作物、歌手の歌唱・演奏・俳優の演技などの実演、CDといったレコード、放送又は有線放送を利用する場合には、著作権者や著作隣接権者の許諾を得る必要があります。
ところが、権利者が誰か分からない、どこにいるか分からない、権利者の相続人が誰でどこにいるか分からないなどの理由で許諾を得ることができないことがあります。
このような場合に、権利者の許諾を得る代わりに文化庁長官の裁定によって、補償金を供託することで適法に著作物を利用できるようにする制度です。
裁定申請の要件
①公表されているもの又は相当期間にわたり公衆に提供されている事実が明らかである著作物です。
②権利者と連絡できないことを証明するために「相当な努力」をしなければなりません。
「相当な努力」とは、
ア、「文化庁長官が定める刊行物その他の資料」を閲覧したか。
イ、「著作権等管理事業者」等に対して照会したか。
ウ、「日刊新聞紙」等によって、権利者情報の提供を求めたか。
といったことによって著作権者と連絡することができないことを明らかにしなければなりません。
以上の要件を満たした上で、文化庁長官宛てに申請を行います。
【2】登録制度とは
著作権については創作した時点で、何もしなくても権利が発生するという無方式主義をとっています。特許権のように特許庁に申請し、登録されて初めて権利が生じるという方式主義ではありません。
自然発生的に権利が生じるのですが、財産権としての著作権が移転するような場合の取引の安全を確保するために登録制度が設けられました。
登録の種類と効果
①実名の登録
無名又は変名で公表された著作物の著作者が、実名の登録をすることができます。その結果、著作権の保護期間が公表後70年間から死後70年間となります。
②第一発行年月日等の登録
著作権者又は無名もしくは変名で公表された著作物の発行者は、最初に発行するか公表した年月日の登録をすることができます。
③創作年月日の登録
プログラムの著作物のみに適用されます。
著作権・著作隣接権の譲渡・質権設定等があった場合、登録をしておくことで第三者に対抗することができます。
⑤出版権の設定等の登録
出版権の設定・移転等があった場合、登録しておくことで第三者に対抗することができます。
まとめ
著作権は、どこかに登録することで権利が発生するものではなく、創作者が創作した時点で自然に発生する権利です。
従って、あとで著作権を利用しようとして著作権者に許諾を得ようとしても、難しい場合があります。
このため文化庁長官の裁定という形で著作物を利用できる仕組みが裁定制度です。
また、著作権は財産権であり譲渡や相続も出来るので、登録をしておくことで著作権の所在を明確にして取引の安全を確保するための仕組みが登録制度です。
著作権に関する裁定制度や登録制度によって著作権者の権利が適切に守られることが大切であると思いました。