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生産緑地制度について

1、生産緑地法

1974(昭和49)年に制定されています。

(目的)

第一条 この法律は、生産緑地地区に関する都市計画に関し必要な事項を定めることにより、農林漁業との調整を図りつつ、良好な都市環境の形成に資することを目的とする。

1970年代に都市への人口集中が進み、急速な都市化が進行しました。そのため農地の宅地化により、市街地の緑地の現象や住環境の悪化、土地の保水機能の喪失といった社会問題が顕在化します。こうした課題に対応するために制定されたのが生産緑地法です。

2、生産緑地とは

市街化区域内の農地で、良好な生活環境の確保に効用があり、公共施設などの敷地として適している500㎡以上の農地のことです。

3、メリット

税制の面での優遇措置があります。

①固定資産税が農地として評価・課税されるので大幅に減額されます。

相続税の納税猶予制度があり、終身営農の場合は免除されます。

4、手続き

①市町村により生産緑地地区が指定されます。

  《要件》 ・500㎡以上の一団の農地

・公共施設などの敷地として適する

・農林漁業の継続が可能であること 等

②農地などとして管理しますが、建築などの行為制限を受けます。

③従事者が死亡または指定されてから30年を経過した場合、農地の「営農を継続」するか、市町村に農地を「買い取り申し出」するか、のどちらかになります。

④市町村は「買い取り申し出」をされた場合「買い取る」か「買い取らない」の決定をして通知します。

⑤市町村が「買い取らない」場合には、営農を希望する人へのあっせんをしますが、不調の場合は制限が解除されて他の用途に転用が可能となります。

5、生産緑地法の改正

2017(平成29)年に生産緑地法が改正されました。

①500㎡の一団の農地でしたが、300㎡に引き下げられました。

②直売所、農家レストランといった農業者の収益性を高める施設の建築が可能となりました。

③所有者の意向により、特定生産緑地として指定されます。指定された場合には「買い取り申し出」の期間が10年延長できます。

6、2022年問題

現存する生産緑地の多くが1992年の改正生産緑地法によって指定されたもののようです。

1974(昭和49)年に制定された生産緑地法では、第1種生産緑地地区は、おおむね 1ヘクタール以上、第2種生産緑地地区は、おおむね0.2ヘクタール以上とされていました。

1992(平成4)年の改正によって、市街化区域内農地が宅地化農地と保全農地に区分されることになりました。保全農地というのは市街化調整区域への編入または生産緑地地区の指定を行う農地のことです。生産緑地は面積要件が500㎡以上の一団の農地と大幅に引き下げられ、転用は厳しく制限されて30年後に買い取り申し出が出来るとされました。

市街化区域何農地は2つの農地に区分され、違った税制上の措置がとられました。

宅地化農地は固定資産税・都市計画税は宅地並み課税とされ、保全農地は農地としての課税とされます。さらに、保全農地の相続税は終身営農の場合に納税猶予制度が適用されることとなったのです。

税制上の優遇措置もあって、1992(平成4)年の法改正を境に生産緑地地区の指定が増加します。

生産緑地地区の指定が行われてから、30年経過すると農地の「営農を継続」するか、市町村に農地を「買い取り申し出」するか、のどちらかになります。

2022年には1992年に指定を受けた生産緑地の30年目が到来し、税制の優遇措置がなくなった都市近郊の農地が大量に放出されて不動産の価格などに大きな影響を与えるのではないかという問題のことです。

2022年問題といわれていますが、市街化区域の農地の減少スピードもバブル時代のような地価上昇もない近年は、さして大きなものではないようです。おそらく10年20年といった長期のスパンで影響が出てくると考えられており、2022年に、すぐ影響が出てくるわけではないようです。不動産を動かしたい業界の人たちは、これを商機に繋げていきたいと考えているのではないでしょうか。

ただ生産緑地地区として指定を受けている農家の人にとっては、真剣に考えなければならない問題ではないかと思います。

7、おわりに

農業経営は厳しいものがありますが、都市近郊の農業には可能性があるのではないでしょうか。何といっても農産物の輸送費がほとんどかかりません。地産地消を進める上では大きなメリットです。こうした立地上の可能性がある農地を残していくことは大きな意味があると思います。

都市の景観や環境保全といったことを考えても、一定の農地が存在することは意義があるのではないでしょうか。