はじめに
農地を農地以外のものにすることを転用といいます。農地を農地以外のものに転用した場合、再び農地に戻そうとしても大きな困難が生じます。食糧生産という農地の役割以外にも環境保全や災害防止といった観点からも、安易に転用することはできません。そのために農地法によって、農地は厳しい規制が設けられています。
しかしながら、まったく転用できないという訳ではなく、一定の手続きによって転用は許可されます。
原則農地転用ができないとされる「農業振興地域内農用地区域内農地」(いわゆる青地)でも、手続きに半年はかかりますが農振除外の申請をおこなった上で転用は可能です。
また、都市計画区域における「市街化区域」では転用の「許可」は必要なく「届出」だけでよいとされています。
転用はできますが、やはり各地域の実情によって厳しく制限されているのが実態です。
農地転用の手続きに関しては各市町村の農業委員会が申請を受け付けることになります。申請を受け付けてから結果が分かるまでは約1か月半から2ヶ月はかかるので、いずれにしても書類等については早めに整理しておかなければなりません。
【Ⅰ】農業委員会関係について
(1)申請前に準備すること
農地転用を農業委員会事務局に申請する前に、転用予定の農地に関する資料を揃えます。
①登記事項証明書(法務局)
②公図(法務局)
③固定資産の課税明細書、無ければ名寄帳(市町村役場)
④市販の住宅地図や都市計画図(市役所等)
(2)農業委員会事務局で確認すること
①青地か白地か
②転用のしやすさについて
④土地改良区の手続きについて
(3)その他
税務課等で転用になった場合、固定資産税がどれぐらいになるのかを聞く。
【Ⅱ】農地転用を申請する前の手続きについて
(1)土地の権利関係
①相続の場合、所有権移転の手続きは終わっているか
②所有権以外の権利関係はどうなっているか
(2)隣地境界について
土地の境界がはっきりしているかどうか。はっきりしていない場合は、確定測量をする必要があるのではないか。
(3)農振除外の申出
青地を白地に変更しなくてはならない場合、最長で1年数か月はかかるのではないか。
(4)土地改良区の手続き
受益地からの除外を事務局に申請(手数料あり)し、役員から了解印をもらう。
市街化調整区域で建築する場合、農地転用申請と同時に行うほうがよい。
(6)道路後退(セットバック)の手続き
建築基準法にもとづき、幅4m以上の道路接面を確保するための道路後退の手続きを市町村役場でおこなう。
(7)道路・水路の占有許可申請と工事の承認申請
農地転用をした場合、雨水の排水が課題となります。雨水排水の許可申請及び工事の承認申請を市町村役場や土地改良区といった管理者の許可を得ます。
(8)条例に関する手続き
それぞれの市町村が環境保全等のために条例を設け、一定の手続きを課している場合があります。
おわりに
一度、農地転用をすると、再び農地としての活用は難しくなります。食糧生産の面だけでなく、周辺の環境にも影響を及ぼすため、簡単には転用できない仕組みとなっています。このため、さまざまな事前の手続きが必要となるため、しっかりと検討しておくことが大切だと思いました。