はじめに
「農業法人」というのは法人として農業を営んでいる法人の通称で、法的なものではありません。
法的な法人としては、会社法に基づく「会社法人」(株式会社・合名会社・合資会社・合同会社)と農業協同組合法による「農事組合法人」があります。
農地を所有するには農地法による「農地所有適格法人」でなければなりませんが、農地を借りて農業を営む場合などは「農地所有適格法人」でなくても構いません。
法人の農業参入
2009(平成21)年、リース方式による農業参入が全面自由化されました。
法人の要件
役員または重要な使用人の1人以上が農業の常時従事者であること、農業というのは農作業に限らず、経営や企画等でも構いません。
基本的条件
農地をすべて効率的に利用、一定の面積を経営(原則50a)、周辺の農地利用に支障がないこと、農地を適正に利用していない場合には契約解除すること、地域における役割分担を果たすこと
以上の要件を満たしていれば、全国どこでも農業に参入できるようになったので、法人(会社法人)の農業参入が増加しています。
農事組合法人とは
1962(昭和37)年に農業協同組合法の一部改正されて発足した法人です。
組合員の「農業生産についての協業を図ることによりその共同の利益を増進する」ことを目的としています。第72条により1号法人と2号法人があります。
1号法人
農業経営を行うわけではなく、設備などの購入や農作業を共同で行う。農地所有適格法人にはなれません。
2号法人
農業経営全般(農業関連事業の製造・加工・販売を含む)をおこなう。農地所有適格法人になることができます。
設立
3人以上の農民が発起人となり、定款の作成、役員の選出等の設立に必要な行為を行った後に、登記をすることで成立します。
成立の日から2週間以内に登記簿の謄本及び定款を添えて都道府県庁に届出します。
農地所有適格法人とは
農業経営を行うために農地を取得し、所有することができる農業法人のことを「農地所有適格法人」といいます。
2016(平成28)年の改正農地法により「農業生産法人」は「農地所有適格法人」に呼称が変更となり、要件が緩和されました。
◇要件
①法人形態
農事組合法人・・・二号法人(農業経営のみを行う)
株式会社(すべての株式について譲渡制限が設けられている非公開会社)
②事業要件
主たる事業が農業であること、つまり農業の売上高が半分以上ということです。(自ら生産した農産物の加工販売等の関連事業を含みます)
③構成員要件
農事組合法人の組合員、株式会社の株主、持ち分会社の社員の過半数が農業関係者であること。
④経営責任者要件
・役員の過半は農業常時従業者(原則として年間150日以上従事する)であること。
・役員または重要な使用人のうち1人以上が農作業(現場における肉体作業)に従事していること。
農地所有適格法人の設立
設立するための特別な手続きはありませんが、農地を取得する場合には要件を満たす必要があります。さらに農地を取得した後も継続して要件を満たす必要があります。
このため毎事業年度の終了後、3か月以内に農業委員会への事業報告等が義務づけられています。
まとめ
法人が農地を借りて農業に参入することは、比較的容易ですが農地を取得するとなると厳しく制限されています。
法人が農地を取得して農業に参入する場合は、農地法改正によって「農地所有適格法人」に限って可能となりました。
農地というのは数十年単位で考えなければならないものですし、地域全体の在り方とも深くかかっており、また、自然環境や安全保障にもかかわってくる事柄です。
厳しい制限があることはやむを得ないことでありますが、これからの農業を考えた場合、農業への法人参入は避けて通れないことだと思います。