1、法の目的
1980(昭和55)年、農用地利用増進法として制定されました。平成5年に農業経営基盤強化促進法と名称が変更されています。「農経法」と略されたりもします。
(目的)
第一条 この法律は、我が国農業が国民経済の発展と国民生活の安定に寄与していくためには、効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担うような農業構造を確立することが重要であることにかんがみ、育成すべき効率的かつ安定的な農業経営の目標を明らかにするとともに、その目標に向けて農業経営の改善を計画的に進めようとする農業者に対する農用地の利用の集積、これらの農業者の経営管理の合理化その他の農業経営基盤の強化を促進するための措置を総合的に講ずることにより、農業の健全な発展に寄与することを目的とする。
効率的で安定的な農業経営を確立するために、意欲ある農業者への農用地の利用集積、経営の合理化を目指したものです。
2、地方自治体による基本方針の策定
①都道府県
農業経営基盤強化促進基本方針を策定します。
②市町村
農業経営基盤強化促進基本構想を策定し、農業経営基盤強化促進事業を実施します。
3、市町村による認定制度
①認定農業者制度
農業者が5年後を目標とした農業改善計画を作成し、市町村が認定します。認定されると補助金・融資・税制・農業者年金などで優遇を受けられます。
②認定新規就農者制度
新規就農者が5年後を目標とした青年等就農計画を作成し、市町村が認定します。認定されると無利子融資・農地のあっせん・農業者年金保険料などの優遇を受けることができます。
4、農地利用集積円滑化事業
農地利用集積円滑化団体(市町村、農協、公社など)が主体となって行います。
①農地所有者代理事業
農地所有者から委任を受けて、売却・貸付けを行う。
②農地売買等事業
農地所有者から買入れや借入れを行い、その売却や貸付けを行う。
受け手は公的機関である農地利用集積円滑化団体と交渉するので、心理的抵抗感が軽減されます。
農地所有者は、情報が集約されている農地利用集積円滑化団体により受け手を見つけやすくなる。
5、農用地利用改善事業
農用地利用改善団体、特定農業法人、特定農業団体が、農地利用の自主的な取り決めに基づき農地の利用調整を推進することを目的とします。
農作業の効率化や農地の利用関係の改善などを行います。
6、農業委員会による利用調整の推進
認定農業者等から経営規模拡大の申出があれば、それに応えるべく農用地の利用調整を実施します。
市町村は、農業委員会の決定を経て、農用地利用集積計画を作成し公告します。
公告によって、農地法の特例としての権利設定・移転の効果が発生し、①権利移動の許可(農地法3条)②賃貸借法定更新(農地法17条)について農地法の適用除外になります。所有権についても市町村の嘱託登記になります。
おわりに
農業者の高齢化に伴い、後継者不足の問題が顕著となってきています。耕作放棄地の増加を抑え、農業者が農業経営を安定・発展させるための法です。農業の発展のために、この法を有効に活用していって欲しいと思います。