はじめに
相続の場合、異母兄弟が存在することがあります。
例えば、離婚して父親と前妻の間に子どもがいたような場合です。
現在の母親との間に生まれた子どもにとっては、母親が異なる異母兄弟、いわゆる腹違いの兄弟ということになります。
このような場合に、どのような相続になるのでしょうか。
《例1》父親が死亡した場合
下記の人間関係で父親が死亡した場合の相続はどうなるでしょうか。
この場合、配偶者である母が2分の1、子どもが3人いるので、一人当たり6分の1ずつということになります。
前妻は、既に離婚しているので相続分はありません。
《例2》兄弟が死亡した場合
父親も母親も死亡した後、子どものCが死亡した場合はどうなるでしょうか。
相続人はAとBになります。
ただし、腹違いの子どもAは民法第900条4ただし書の規定により子どもBの1/2となります。
したがって相続分は、Bが2/3、Aは1/3となります。
ここに出てくる「父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹」のことを、半血兄弟といったりします。半血兄弟の相続分が問題となるのは、父が死亡した時の相続についてではありません。半血兄弟が死亡し、その相続人が兄弟姉妹となる場合です。
「父母の双方を同じくする兄弟姉妹」のことは、全血兄弟姉妹といいます。
第900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
1 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
2 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
3 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
4 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
《例3》配偶者がいるけれど、子供のいないCが死亡した場合
父も母も死亡しており、配偶者はいるけれど子供がいないCが死亡した場合はどうなるでしょう。
民法第900条3号に基づき、配偶者は3/4で残りの1/4を兄弟姉妹で分け合います。
この場合も《例2》と同じように腹違いの子どもは1/2なので、AはBの半分ということで、相続分はAが1/12、Bが2/12ということになります。
異母兄弟の相続のポイント
①相続が発生して、遺産分割協議書を作成する場合、すべての相続人で合意する必要があるため、異母兄弟が加わっていないと無効となってしまいます。
異母兄弟はどうしても疎遠になりがちなので、相続の際は戸籍等によりさかのぼって相続人を確定しておく必要があります。
②子供がいない兄弟姉妹が死亡した場合、異母兄弟の法定相続分の算出に気を付けなければなりません。
③疎遠な異母兄弟の間では、相続に関して対立が生じやすくなります。
おわりに
厚生労働省の「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、令和3年における婚姻件数は50万1116組で、離婚件数は18万4386組ということです。
子どもがいる中で離婚し、再婚するというケースも珍しくないのではないでしょうか。
普段は意識していないかもしれませんが、相続が発生した場合には異母兄弟姉妹の存在がクローズアップされることでしょう。
相続が争続にならないためにも、きちんとした知識を身につけておきたいものです。