MENU

相続土地帰属制度が令和5年4月27日からスタートします!

はじめに

全国の土地のうち所有者不明土地が2割を超えているといわれています。

所有者不明土地とは、①不動産登記簿によって所有者が直ちに判明しない土地、②所有者が判明しても所在が不明で連絡がつかない土地、とされています。

所有者が不明なために、その探索に時間と費用がかさむため、公共事業が進まなかったり、民間取引や土地の利活用に支障をきたしたりしています。

また、土地が適切に管理されずに放置されているため、隣地に悪影響が及ぶといった問題も生じてきています。

このため所有者不明土地の発生を防ぐために、民法不動産登記法が改正されるとともに、令和3年4月28日に新しく相続土地国庫帰属法が公布され、令和5年4月27日より相続土地国庫帰属制度がスタートすることとなりました。

Ⅰ.相続土地国庫帰属制度とは

相続した土地を手放したいというニーズに応え、土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度が創設されました。将来的な所有者不明土地の発生を予防することをねらいとした制度です。

Ⅱ.手続き

①法務局に承認申請書の提出

   ↓

②書面審査

   ↓

③実地調査

   ↓

法務大臣による承認

   ↓

⑤負担金の納付(30日以内)

   ↓

⑥国庫帰属

 

Ⅲ.申請できる人

相続又は遺贈によって土地を取得した人です。

共有地の場合は、共有者全員で申請する必要があります。

Ⅳ.土地の要件

通常の管理または処分をするにあたり、過分の費用や労力を必要とする土地かどうかを基準として、却下と不承認の2つの処分があります。

却下・不承認になるような土地でなければ、国庫帰属が承認されます。

(A)却下

却下は、過分の費用・労力を必要として、申請しても中身が検討されることなく退けられるもので、いわゆる門前払いです。次のような場合です。

〇建物がある土地

〇担保や使用収益の権利が設定されている土地

〇他人による使用が予定されている土地(墓地、境内地、現に通路や水路・ため池等になっている土地)

〇有害物質で汚染されている土地

〇境界・所有権等で争いがある土地

(B)不承認

不承認とは、内容の確認や検討をしたうえで、過分の費用・労力が必要かどうかを個別に判断をして、退けられるものです。

〇勾配が30度以上で高さが5m以上ある崖のある土地

〇工作物・車両・樹木等がある土地

〇地下に除去しなければならないものがある土地

〇隣接所有者等によって通行が妨害されたり、所有権に基づく使用収益が妨害されたりしている土地

〇災害発生防止のために必要な措置を講じなければならない土地

〇鳥獣や病害虫によって周辺に被害を生じさせる恐れがある土地

〇追加的に整備を必要とする森林

〇追加で金銭債務を負担しなければならない土地

〇金銭債務を国が承継しなければならないような土地

Ⅴ.負担金

国庫帰属が承認された場合、負担金を納入します。負担金の金額は、10年分の土地管理費相当額とされる20万円ですが、一部の管理を要する土地の場合は、面積に応じて算定されることとなります。

おわりに

所有者不明土地が増加すると様々な問題が生じることから、国は国庫帰属の制度を創出しましたが、同時にどんな土地でも国庫帰属できるわけではありません。

モラルハザードの発生を防ぐために土地の要件が厳しく定められているようなので、どこまで実効性があるのかはこれからの運用次第という面もあるのではないかと思いました。