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不動産登記制度の見直し

はじめに

全国の土地のうち「所有者不明土地」が2割を超えているといわれています。

「所有者不明土地」とは①不動産登記簿によって所有者が直ちに判明しない土地、②所有者が判明しても所在が不明で連絡がつかない土地、をいいます。

所有者が不明なために、その探索に時間と費用がかさむため、公共事業が進まなかったり、民間取引や土地の利活用に支障をきたしたりしています。

また、土地が適切に管理されずに放置されているため、隣地に悪影響が及ぶといった問題も生じてきています。

このため「所有者不明土地」の発生を防ぐために、不動産登記法が改正され、順次、施行されることとなっています。

Ⅰ.相続登記申請の義務化(令和6年4月1日施行)

①背景

相続が発生しても相続登記の申請は任意なので、土地の価値が低い場合、手間も費用も掛かる登記の申請は怠りがちとなります。このため「所有者不明土地」になりやすいことから、相続登記の申請が義務化されることとなりました。

②具体的にはどうなるのか

〇相続人は、不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請をしなければなりません。被相続人の死亡を知った日からではありません。

〇遺産分割の話がまとまった場合、相続人は遺産分割が成立した日から3年以内に登記を申請しなければなりません。

③罰則

義務に違反した場合は、10万円以下の過料となります。

過料というのは行政上の罰で、刑事罰である科料とは違い、前科は付かないものです。

Ⅱ.相続人申告登記制度の新設

①背景

 不動産を相続する場合、法定相続人の範囲や法定相続分の割合を確定するまでに時間がかかることがあります。

2023(令和4)年4月1日より相続登記の申請が義務化され、違反をすると罰則が生じることになりました。このため、より簡単に相続登記の申請義務を果たすことができるような、相続人申告登記という新しい制度が創設されました。

②相続人申告登記制度とは

不動産を相続した人が、法務局に①相続が開始した旨②自らがその相続人である旨を申し出ることで、申請義務を履行したものとみなすというものです。

 申出を受けた法務局の登記官は、申出をした相続人の氏名・住所等を職権で登記に付記します。

 相続人が複数いたとしても、一人の相続人によって申出することが可能です。

とりあえず相続があることを申告するだけなので、相続人の範囲や相続分の割合の確定は必要ありません。

あくまでも暫定的な措置なので、後日、遺産分割協議が成立した場合は、合意に基づく相続登記をする必要があります。

③登記簿のイメージ

登記官が職権で登記に付記する登記簿のイメージです。

《参照》相続土地の登記義務化と国庫帰属制度 司法書士 山田茂樹

相続土地の登記義務化と国庫帰属制度-原野商法の二次被害防止の視点で (kokusen.go.jp)

Ⅲ.住所等の変更登記の申請の義務化(令和8年4月までに施行)

①背景

転居して住所が変わったり、結婚等によって氏名が変わったりした時の変更登記の申請は任意であったため、「所有者不明土地」発生の一因となっていました。このため住所等の変更登記申請が義務化されました。

②具体的にどうなるのか

所有者は、住所等を変更した日から2年以内に変更登記の申請をしなければなりません。

③罰則

義務に違反した場合は、5万円以下の過料となります。

おわりに

「所有者不明土地」の発生を防ぐために所有者の義務が課せられることになりました。

この他にも登記がされやすくするための手続きの簡素化や合理化に向けての不動産登記制度の見直しが行われていくようです。

土地の有効利用が促進され、所有者にとって負担の少ない制度になってほしいと思います。