MENU

入管法と行政(12)~入管法の歴史②~

はじめに

平成において、少子高齢化・人口減少といった社会背景よって、外国人労働者の受入れ政策は、国内労働市場の保護を考慮したものから産業政策上の外国人人材の確保へと大きく変化してきました。

【1】「特定活動」の活用

「特定活動」は、法務大臣が個々の外国人について特に認める在留資格であり、例外的補充的に外国人を受け入れるためのものですが、この「特定活動」がより一般的な形で広げられました。

①特区制度による外国人の受入れ

次の、さまざまな特区制度によって外国人を「特定活動」で受け入れるようになりました。

2003(平成15)年、構造改革特別区域法改正による入管法の特例によって、情報処理業務に従事する外国人。

2013(平成25)年、総合特別区域法による日本の伝統料理の海外普及を目的とする事業に従事する「特定調理活動」の外国人。

2015(平成27)年、国家戦略特別区域法の改正による「特定家事支援活動」を行う外国人。

2017(平成29)年、国家戦略特別区域法の改正による「特定農業支援活動」を行う外国人。

技能実習生を「特定活動」により受入れ

2014(平成26)年、建設分野技能実習を修了した外国人の外国人建設就労が「建設特定活動」として認められました。

東日本大震災の復興事業を促進し、2020(令和4)年の東京オリンピックパラリンピック大会関連の建設事業に対応するためということです。

同様に造船分野でも造船分野技能実習を修了した外国人が造船業務に従事できるようになりました。

建設・造船のいずれの分野も緊急的・時限的な措置として位置づけられています。

③製造業外国従業員受入れ事業

2016(平成28)年、製造業に関して、日本の外国にある事業所の外国従業員が「特定活動」の在留資格で製造業務に従事することが可能となりました。

【2】高度人材ポイント制

2012(平成24)年の法務省告示により、翌年より高度人材ポイント制が始まりました。学歴・職歴・年収等により計算されたポイントが一定以上になると、出入国管理の優遇措置を受けられるというものです。

高度の専門的能力を有する人材の入国・在留を促進することを目的としています。

【3】在留資格の再整備

技能実習

研修技能実習制度については実務研修に伴う「研修」によって在留する外国人を低賃金労働者として使用するなどの問題が生じていました。

このため2016(平成28)年に技能実習法が制定され、技能実習計画の認定制や監理団体の許可制などが定められました。

②「特定技能」の新設

2018(平成30)年の法改正で「特定技能」の在留資格が新設されました。

人手不足の分野で日本の産業政策の観点から必要な人材を確保しようとするものです。

《特徴1》技能実習修了者が「特定技能1号」を取得して就労することができます。

《特徴2》法務大臣は所管官庁と共に分野別運用方針を定め、受入れ分野を所管する官庁が制度の運用に積極的に係われるようにしました。

《特徴3》「特定技能」については在留資格認定証明書の交付を受けていることが必要とされています。交付の停止措置も可能なので「特定技能1号」の在留資格による外国人の受入れ上限を調節することができます。