はじめに
昨今、コンプライアンスは各方面において、益々、重要となってきています。
コンプライアンスは直訳すると「法令遵守」ですが、法令だけでなく社会的なルールや規則などを守ることを言うようです。
現代では組織の一員が起こした不祥事に対して、非常に厳しい目が注がれていることから、誰かが何かの不祥事を起こしてしまうと、組織全体の信頼が失われ、大きなダメージを受ける可能性があります。
行政書士においても同様であり、不祥事が発生すれば、行政書士全体に対する信頼が損なわれてしまいます。
残念ながら職務上請求書の不正使用などといった、行政書士のコンプライアンスに欠けた行動によって信頼を損ねてしまう事件が発生しています。
今一度、行政書士のコンプライアンスについて考えてみたいと思います。
【1】行政書士の職業倫理
職業倫理というのは、どの職業でもそうですが「やっていいこと」と「やってはいけないこと」をきちんと認識して行動することです。
行政書士にも社会的な責任や役割があり、それを果たすために自らの行動を律するとともに、きちんとした倫理観をもって行動することが必要です。
【2】行政書士法
行政書士法第1条において行政書士の目的は「国民の権利利益の実現に資する」こととされており、その目的を果たすためにも国民の信頼が不可欠です。
国民の信頼に応えるためにも、行政書士としての社会的責任の重さを自覚し、自ら襟を正して行政書士の職業倫理について確認する必要があります。
【3】行政書士倫理
行政書士会は、行政書士法に基づく行政書士の使命を果たすための基本姿勢として、2006(平成18)年に「行政書士倫理」を制定しています。
①行政書士としての責務
・業務を受任した場合、放置することなく、誠実に取り組むこと。
・依頼者に対して的確に説明し助言をすること。
・守秘義務を守ること。
・職務上請求書の不正使用といった、職務上の権限を目的外で行使しないこと。
・反社会的法人と関わるなどして、品位又は職務の公正を損なう事業に関与しないこと。
・委任者に不利な受任契約を作成しないなど、公正を旨として業務を遂行すること。
・無資格者に名前を貸すといった名義貸しをしないこと。
・違法・不正行為の助長の禁止。
・他の行政書士を攻撃するなどの品位を損なう広告をしないこと。
・責任をもって補助者・事務員の指導監督をすること。
②依頼者との関係
・相手の態度が気に入らないなどといって、正当な理由もなく依頼を拒むことはできない。
・行政書士業務ではないなど、正当な事由を説明した上で依頼を拒むことができる。
・不正な疑いがあるときは受任してはならない。
・依頼の趣旨に基づき、内容や範囲を明確にして受任すること。
・適正な報酬を提示して受任すること。
・速やかに業務に取り組み、経過や結果を委任者に報告すること。
・法令や依頼の趣旨に反するような書類を作成してはならない。
・預かった書類は善良な管理者の注意をもって管理すること。
・預かり金は事故の金員と明確に区分しておくこと。
・病気など何らかの事情により受任の処理ができなくなった場合、他の行政書士に引き継ぐなど、責任をもって適切な処置をすること。
・受任事件名・年月日・報酬・依頼者の住所氏名等を記した業務帳簿を備え付け、2年間は保存すること。
・行政書士は、依頼者保護のために(株)全行団の行政書士賠償責任保険等に加入するように努めること。
おわりに
職業倫理といっても、どんな仕事をしていても職業人として誰でもが有している至極、当たり前のことばかりです。ただ、残念ながら一部では不正をしている人がいるのも確かです。
人は弱いものなので、いつそのような心の隙が生じてしまうかもわかりません。そのような事態に陥ってしまわないように、常に自分事として職業倫理を意識しておきたいと思います。