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行政書士と弁護士法72条

弁護士法72条

第72条  弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訴事件及び審査請求、異議申し立て、再審査請求等行政庁に対する不服申し立て事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

 

弁護士法によると、弁護士でない人が報酬を得る目的で法律事件に関して、法律事務をしてはいけないということです。このようなことをすると、非弁行為で法律違反ということになります。

ただ条文中の「法律事件」については、「事件性必要説」と「事件性不要説」があります。

「事件」というのは紛争となっているもの、あるいはその可能性があるものなので事件性が必要であるといった見解に対して、「事件」というのは紛争になっているとか、その可能性があるとかといった意味はないので事件性は不要であるとする、見解の違いのようです。

国や学者の見解は「事件性必要説」、日弁連は「事件性不要説」のようです。

「法律事件に関しての法律事務」は禁止されていますが、「法律事件」についての考え方の違いによって「法律事務」が非弁行為か、そうでないかになるようです。

 

行政書士と弁護士法72条

弁護士法72条には「ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」という文言があります。

行政書士行政書士法という、まさに弁護士法72条による「別段の定め」があるので、一定の書類作成事務をすることができます。

 

行政書士法

第1条の2 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(中略)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む)を作成することを業とする。

行政書士は、権利義務に関する書類の作成を業として出来ます。

権利義務に関する書類とは、権利の発生、存続、変更、消滅の効果を生じさせることを目的とする意思表示を内容とする書類をいいます。遺産分割協議書、各種契約書、示談書、内容証明、定款等です。

 

行政書士がどこまで業として出来るかの判例

東京地裁 平成5年4月22日判決

相続財産,相続人の調査,相続分なきことの証明書や遺産分割協議書等の書類の作成、右各書類の内容について他の相続人に説明することについては、行政書士法1条に規定する「権利義務又は事実証明に関する書類」の作成に当たるから行政書士の業務の範囲内であるが、遺産分割について紛争が生じ争訟性を帯びてきたにもかかわらず他の相続人と折衝することは、単に行政書士の業務の範囲外であるというばかりでなく、弁護士法72条の「法律事務」に該当し、いわゆる非弁活動になる

 

相続財産や相続人の調査、相続分なきことの証明書や遺産分割協議書等を作成して説明することは行政書士の業務ですが、紛争が生じたことにつき他の相続人と折衝することはいわゆる非弁活動となり、行政書士が立ち入ってはいけない分野となります。

 

2002(平成14)年の行政書士法改正により、第1条の3で「契約その他に関する書類を代理人として作成すること」が出来るようになりました。

依頼者の代理人として書類作成に係わる範囲内における代理行為として、相手方との合意形成を進めていくために、両者の意見の相違を埋めながら、最終的に書面作成が可能であれば、弁護士法72条に抵触しないということでしょうか。

 

おわりに

弁護士法第72条をめぐっては、これまで様々な判決が下されています。また、第72条の文言を巡っても学説が分かれています。

自分なりに弁護士法72条をまとめてみましたが、これからも行政書士として第72条をしっかりと学ぶことは大切なことだと思いました。