著作権の制限について
著作権法では、書籍などを複製することは原則著作権者の許諾を必要としている上で、公益や社会慣行等によって著作権者の利益を不当に害さない場合は自由に利用することを認めています。
著作権を制限する場合の根拠については、ベルヌ条約のスリー・ステップ・テストという制限のためのルールがあります。
ア、特別な場合
イ、著作物の通常の利用を妨げない場合
ウ、権利者の正当な利益を不当に害さない場合
以上の場合には著作権の制限もやむを得ないとされています。
著作権の権利制限の種類
①私的使用のための複製
個人的に又は家庭内等で使用する場合には、著作権者による権利制限は出来ないとされています。ただし、高機能な複製機器が普及したことにより、権利者の利益が害される場合が多くなっていることから、私的使用目的の複製は制限される傾向にあります。
第30条 著作権の目的となっている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
②公益性
著作権者の利益を不当に侵害することはできませんが、公益的な理由がある場合には認められます。教育関係、図書館・美術館・博物館等、福祉関係、報道関係、立法・司法・行政関係といった分野です。
③社会的な慣行
長年に渡って培われてきた社会的な合意です。引用、非営利で無料の場合、転載関係といった場合です。
ア、引用
引用についての要件は、「公表された著作物であること」「公正な慣行に合致すること」「引用の目的上正当な範囲で行われるもの」とされています。
最高裁の判例では、自分の作品と引用元との区別をはっきりとしておく明瞭区分性があること、自分の作品が主で他人の作品が従であることによって、引用かどうかの判断がなされるとされています。
また総合考慮説による高裁判決もあります。
第32条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
イ、非営利で無料の上演、演奏、上映、口述
営利を目的としない、観客からお金をとらない、出演者に報酬を支払わない、という3つの要件を満たせば無断で利用できます。
ただし、行政のHPで他人の著作物を無断掲載するといった公衆送信については、非営利・無料であっても違法となります。
第38条 公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう)を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。
権利侵害があった場合
①刑事責任
ア、故意に著作権等を侵害した場合
10年以下の懲役又は1千万以下の罰金で、原則として告訴が必要であり、併科もあります。
法人の場合は、3億円以下の罰金となっています。
イ、故意に著作人格権を侵害した場合
5年以下の懲役又は5百万円以下の罰金で、併科もあります。
②民事責任
権利侵害があった場合、民法によって民事責任が追及されます。
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
第710条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。