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著作権侵害にあたらない事例

はじめに

著作権法では著作権侵害にあたらない事例が定められています。

ただし、著作権者の利益を不当に害する場合は認められなかったり、補償金の支払いが必要だったりする場合があります。

 

①私的使用のための複製

個人的、家庭内限定で使用する私的使用の場合に適用されますが、業務上の利用については適用されないとされます。

 

第30条 著作権の目的となっている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

 

②図書館等における複製等

公共図書館・大学・高等専門学校等の図書館等が行う複製サービスに適用されますが、小・中・高の図書室は適用されません。

 

第31条 国立国会図書館及び図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるものにおいては、次に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等の図書、記録その他の資料を用いて著作物を複製することができる。

一 図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分の複製物を一人につき一部提供する場合

二 図書館資料の保存のため必要がある場合

三 他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料の複製物を提供する場合

 

③引用

論文・レポート等の作成にあたって適用されますが、明瞭区分性・主従関係等の要件が必要です。

周知目的の公共機関名義で公表される広報資料・調査統計資料・報告書等は、刊行物に転載できます。

 

第32条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

2 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。

 

④教科用図書代替教材への掲載等

学校教育の必要において認められる限度で、教科用図書及び教科用図書代替教材(「学習者用デジタル教科書」のことです)に掲載することができます。ただし、掲載するには著作権者への補償金の支払いが必要です。

 

第33条 公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、教科用図書に掲載することができる。

2 前項の規定により著作物を教科用図書に掲載する者は、その旨を著作者に通知するとともに、同項の規定の趣旨、著作物の種類及び用途、通常の使用料の額その他の事情を考慮して文化庁長官が定める算出方法により算出した額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

3 文化庁長官は、前項の算出方法を定めたときは、これをインターネットの利用その他の適切な方法により公表するものとする。

4 前三項の規定は、高等学校の通信教育用学習図書及び教科用図書に係る教師用指導書への著作物の掲載について準用する。

 

第33条の2 教科用図書に掲載された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、教科用図書代替教材に掲載し、及び教科用図書代替教材の当該使用に伴っていずれの方法によるかを問わず利用することができる。

2 前項の規定により教科用図書に掲載された著作物を教科用図書代替教材に掲載しようとする者は、あらかじめ当該教科用図書を発行する者にその旨を通知するとともに、同項の規定の趣旨、同項の規定による著作物の利用の態様及び利用状況、前条第二項に規定する補償金の額その他の事情を考慮して文化庁長官が定める算出方法により算出した額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

3 文化庁長官は、前項の算出方法を定めたときは、これをインターネットの利用その他の適切な方法により公表するものとする。

 

⑤試験問題としての複製

著作権者の利益を不当に害することがない範囲で、入学試験や定期試験等で利用できます。

ただし、営利目的の場合は補償金を支払わなければなりません。

 

第36条 公表された著作物については、入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定の目的上必要と認められる限度において、当該試験又は検定の問題として複製し、又は公衆送信を行うことができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

2 営利を目的として前項の複製又は公衆送信を行う者は、通常の使用料の額に相当する額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

 

⑥営利を目的としない上演等

営利を目的とせず、聴衆・観衆から料金を徴収せず、出演者に報酬を支払わない等の条件を満たせば利用できます。

 

第38条 公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。

 

⑦公開の美術の著作物等の利用

彫刻など、屋外に設置されているものは、利用することができますが、彫刻を複製する等の場合は許諾が必要です。

 

第46条 美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。

一 彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合

二 建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合

三 前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合

四 専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合

 

おわりに

著作権に関しては私的な使用等の侵害にあたらない場合もありますが、やはり慎重に取り扱う必要があるのではないでしょうか。

特に現代は個人がネットで容易に発信できる状況なので、発信しようとする個人が著作権について学び、慎重に判断することが求められていると思います。

今回は、侵害にあたらないとされる主なものを列挙してみましたが、他にもありますので、詳細はこちらをお読みください。

《参考》

「改正著作権法第35条運用方針」(令和3年度版)

~著作物の教育利用に関する関係者フォーラム~