はじめに
相続が発生した場合、次の三つの内のどれかを選択をすることができます。
《単純相続》
被相続人の資産・債務などのすべてを相続する。
《限定相続》
相続人が相続によって得た資産の範囲で被相続人の債務を受け継ぐ。相続人全員で家庭裁判所に申述します。
《相続放棄》
被相続人の資産・債務などのすべてを放棄する。相続人が単独で家庭裁判所に申述します。
いずれを選択するかは、相続人が判断することですが、今回は《相続放棄》について見ていきます。
家庭裁判所への申述期間
《限定相続》《相続放棄》のいずれにしても、家庭裁判所に申述する場合には、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内とされています。
第915条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。
相続放棄
相続放棄というのは、最初から相続がなかったことになります。代襲相続もありません。相続放棄になると相続順位は、第1順位(子ども)→第2順位(父母)→第3順位(兄弟姉妹)と繰り上がっていきます。
このため最初は相続人でなかった人が相続人になり、マイナスの遺産を引き継ぐことになる場合もあります。
トラブルを避けるためには、相続人になりうる人の全員と話をしながら手続きを行った方がよいでしょう。
相続人がいなくなった場合
相続人の全員が相続放棄をした場合、利害関係者が家庭裁判所に相続財産の管理人の選任申し立てをします。利害関係者とは「利害関係人(被相続人の債権者,特定遺贈を受けた者,特別縁故者など)・検察官」です。
相続を放棄した相続人は、相続財産の管理人への引継ぎを完了するまでは自己の財産に対するのと同一の注意義務が求められます。
最終的に引き取り手のなくなった財産は国庫に帰属されます。
第940条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
相続財産の管理人の費用
相続財産の管理人の選任申し立てには、相続財産の管理人が引き継いだ相続財産を売却したり管理したりするための費用や相続財産の管理人の報酬も必要になります。
相続財産に不足が出る場合、10万円~100万円程度の予納金を裁判所に納めることがあります。
おわりに
被相続人のマイナス財産を相続放棄する場合、他の相続人との関係や相続放棄した後の財産管理といった点に気を付けておかなければならないことがあります。
相続放棄を考える場合には、事前に専門家と相談したほうがよいと思いました。
《参考》
相続豆知識~全員が相続放棄したら財産はどうなる?相続人がいないとどうなる? | 日本FP協会 (jafp.or.jp)