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日常生活自立支援事業について

はじめに

日常生活自立支援事業は、社会福祉法第2条3項12号に第2種社会福祉事業として規定されている事業です。

第二条 この法律において「社会福祉事業」とは、第一種社会福祉事業及び第二種社会福祉事業をいう。

3 次に掲げる事業を第二種社会福祉事業とする。

十二 福祉サービス利用援助事業(精神上の理由により日常生活を営むのに支障がある者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービス(前項各号及び前各号の事業において提供されるものに限る。以下この号において同じ。)の利用に関し相談に応じ、及び助言を行い、並びに福祉サービスの提供を受けるために必要な手続又は福祉サービスの利用に要する費用の支払に関する便宜を供与することその他の福祉サービスの適切な利用のための一連の援助を一体的に行う事業をいう。)

 

毎日の暮らしの中で不安なことや困っていることがある場合、福祉サービスの手続きやお金の管理の手伝いなどをすることで日常生活のサポートをする事業です。

 

福祉サービスとは

福祉サービスというのは介護保険制度による高齢者福祉サービスや障がい者自立支援法による障害福祉サービスなどです。

ホームヘルプサービス、デイサービス、食事サービス、入浴サービス、就労や外出の支援など様々なサービスがあります。

 

事業の実施主体

社会福祉協議会が実施主体となっており、相談からサービス提供まで行っています。

「専門員」が利用者の実態を把握し、支援計画を作成し、契約締結の業務を行います。

生活支援員」は契約の内容に沿って、福祉サービスの利用手続きやお金の出し入れといった業務を行います。

 

サービスの利用者

一人で契約の判断をすることが不安な人やお金の管理などに困っている人などが利用できます。

認知症高齢者・知的障がい者・精神障がい者など、判断能力が不十分な人が対象になりますが、認知症と診断された高齢者・療育手帳精神障害者保健福祉手帳を有している人だけに限定されるものではありません。

施設や病院に入所・入院した場合でも、専門員や生活支援員が訪問してサービスを提供します。

ただし、利用者は判断能力が不十分な人ではありますが、契約内容について判断できる能力を有してなければなりません。

やや矛盾しているようですが、福祉の観点から援助が必要な人に限定されるとともに、契約は任意の財産管理契約であるために契約締結能力が必要とされています。

契約能力に疑問な点がある場合には、契約締結審査会によって判定されます。

 

援助内容

どのようなサービスが提供されるのかについては、「社会福祉法人 全国社会福祉協議会」のパンフレットで次のように紹介されています。

 

福祉サービスを安心して利用できるようにお手伝いします。

〇さまざまな福祉サービスの利用に関する情報の提供、相談

〇福祉サービスの利用における申し込み、契約の代行、代理

〇入所、入院している施設や病院のサービスや利用に関する相談

〇福祉サービスに関する苦情解決制度の利用手続きの支援

毎日の暮らしに欠かせない、お金の出し入れをお手伝いします。

〇福祉サービスの利用料金の支払い代行

〇病院への医療費の支払いの手続き

〇年金や福祉手当の受領に必要な手続き

〇税金や社会保険料、電気、ガス、水道等の

公共料金の支払いの手続き

〇日用品購入の代金支払いの手続き

〇預金の出し入れ、また預金の解約の手続き

日常生活に必要な事務手続きのお手伝いをします。

〇住宅改造や居住家屋の賃借に関する情報提供、相談

〇住民票の届け出等に関する手続き

〇商品購入に関する簡易な苦情処理制度(クーリング・オフ制度等)の利用手続き

大切な通帳や証書などを安全な場所でお預かりします。

〇保管を希望される通帳やハンコ、証書などの書類をお預かりします。

※保管できるもの(書類等) 年金証書、預貯金通帳、証書(保険証書、不動産権利証書、契約書など)、実印、銀行印、その他実施主体が適当と認めた書類(カードを含む)

※宝石、書画、骨董品、貴金属類などはお預かりできません。

 

手続き

家族・本人からの問い合わせ → 専門員との相談 → 支援計画の提案 → 利用契約の締結 → サービス開始

 

費用

相談・支援計画の作成は無料ですが、福祉サービス利用手続きや金銭管理サービスなどは本人負担となります。

 

*サービス利用料は原則本人負担ですが、低廉な価格に設定されています。また、生活保護受給者等は減免されます。

 

運営適正化委員会

運営適正化委員会とは、社会福祉法83条に基づき都道府県社会福祉協議会にサービス提供の適正さの監督及び苦情処理のための公的な第3者機関として設置されているものです。

社会福祉協議会は運営適正化委員会に対して、定期的に報告し監督を受けます。

 

第八十三条 都道府県の区域内において、福祉サービス利用援助事業の適正な運営を確保するとともに、福祉サービスに関する利用者等からの苦情を適切に解決するため、都道府県社会福祉協議会に、人格が高潔であつて、社会福祉に関する識見を有し、かつ、社会福祉、法律又は医療に関し学識経験を有する者で構成される運営適正化委員会を置くものとする。

 

おわりに

日常生活自立支援事業は、事業主体が社会福祉協議会であり、チェック機能としての運営適正化委員会も備えられているため、利用者からすると比較的安心ではないでしょうか。

費用もあまり負担のない程度であり、高齢者や障がいのある方にとっては有用な仕組みであるかと思いました。

 

《参考》

日常生活自立支援事業パンフレット|全国社会福祉協議会 (shakyo.or.jp)

成年後見の法律相談〈第2次改訂版〉」赤沼康弘・鬼丸かおる編 学陽書房