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法定後見制度について

はじめに

成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2つがあります。

法定後見制度は、本人に判断能力を欠いているか、不十分な場合であり、判断能力がある場合は利用できません。任意後見制度は、本人の判断能力が衰えた時のために、事前に準備しておく制度です。

法定後見制度については、2000(平成12)年の民法改正によって、後見・保佐・補助という新しい制度が施行されました。

この制度は、家庭裁判所が申立てを受けて、判断能力が不十分な者には補助(民法15条)判断能力が著しく不十分な者には保佐(民法11条)判断能力を欠いた常況にある者には後見(民法7条)とする心理を行い、それぞれ補助人・保佐人・後見人が選任されるというものです。

 

第七条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。

 

第十一条 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。

 

第十五条 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。

2 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。

 

申立権者

本人、配偶者、四親等内の親族(四親等内の血族・配偶者・三親等内の姻族)、未成年後見人、未成年後見監督人、後見人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人、検察官です。

さらに市町村長に対して、65歳以上の人、知的障がい者、精神障がい者が「福祉を図るため特に必要があると認められるとき」に申立権が付与されました。

 

手続き

家庭裁判所は申立てにより、鑑定・親族への意向照会、本人調査といったことについて審理します。

審理を経て、審判書を申立人と成年後見人等に送ります。

審判書を受領してから異議なく2週間が経過すると、審判が確定し法定後見が開始され、法務局に法定後見開始の登記がなされます。

 

成年後見とは

成年後見人は財産管理と身上監護に関する事務を行います。

財産管理では、預貯金や有価証券の管理、収支の管理、税務処理を行います。

身上監護では、施設入所・介護・医療に関する契約を締結します。

善良なる管理者の注意義務があり、職務を遂行するにあっては後見される人の意思を尊重するとともに、心身や生活に配慮することが必要です。

財産に関する包括的な代理権が与えられていますが、居住用不動産の処分については家庭裁判所の許可が必要です。また、追認権・取消権を認められていますが、「日用品の購入その他日常生活に関す行為」については取り消すことができません。

本人が死亡した場合に後見は終了し、2カ月以内に家庭裁判所に報告します。

 

保佐とは

被保佐人は「日用品の購入その他日常生活に関する行為」はすることはできますが、民法13条に列挙されている法律行為を単独では出来ません。

 

十三条 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

 元本を領収し、又は利用すること。

 借財又は保証をすること。

 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。

 訴訟行為をすること。

 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。

 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。

 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。

 新築、改築、増築又は大修繕をすること。

 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。

 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。

 

被保佐人は法律行為をすることはできますが、民法13条にあるような行為を行っても、本人及び保佐人は取り消すことができます。

家庭裁判所の審判によって保佐人に代理権が付与された場合は、その特定の行為については代理人となることができます。

ただし、申し立てをする場合には、本人の同意が必要です。

保佐人の権限は限定されており「保佐の事務」を行うことが職務です。

 

補助とは

軽度の認知症・知的障がい・精神障がいといった「事理を弁識する能力が不十分である者」について保護することを目的としています。

本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求によって審判を家庭裁判所に申し立てます。自己決定権の尊重のために本人の同意が必要となっています。

補助開始の審判によって補助人が選任されるとともに、代理権や同意権の範囲・内容が個々の事案に応じて決定されます。

補助人は預金の管理・不動産等の処分・介護契約・入院等の医療契約・施設入所契約といった特定の法律行為について代理権を有します。

 

おわりに

判断能力が不十分な状態となってから、法定後見は利用することができます。

できるだけ本人の意思を尊重しながら保護を行うという制度なので、厳格な仕組みが構築されていると思います。

そのため制度を利用する場合は、しっかりと専門家の話を聞いて理解しておくことが大切だと思います。