はじめに
近年、ドローンの普及に伴い、災害現場やビジネスでの活用が広まってきており、その有用性が各方面で認識されるようになってきています。
主に映像の分野において、広くドローンが活用されてくると、簡単に空から空撮できるだけにプライバシーの侵害が起こりやすくなります。
さらに空撮された映像がインターネット上で配信されると、深刻な人権侵害が生じ法律違反となる場合も生じてきます。
ドローンは今後、ますます各方面で発展することが予想される分野ですので、このような人権侵害が起きないように配慮して活用されることが大切です。
総務省では平成27年に『「ドローン」による撮影映像等のインターネット上での取扱いに係わるガイドライン』を公開し、ドローンの活用とプライバシー保護のバランスについて見解を示しています。
リスク
ドローンで空撮した映像を、非撮影者の同意なしにインターネットで公開することは、民事上・刑事上・行政上の責任を問われる場合があります。
〇民事上においては、「民法」709条の不法行為に基づく損害賠償責任を負う場合があります。
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
〇刑事上においては、「軽犯罪法」や都道府県の「迷惑防止条例」の罪に該当する場合があります。
第1条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
23 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
〇行政上においては、「個人情報の保護に関する法律」の違反行為になる場合があります。
第17条 個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。
〇人格権に基づき、「プロバイダ責任制限法」による『送信を防止する措置』という手続きを経て書き込みの削除が行われ、損害賠償請求の対象となる場合もあります。
プライバシー侵害とは
公開する利益と公開により生ずる不利益を比較して判断されます。
「個人の住宅等の住居の所在地に関する情報をみだりに公開されない利益」は法的に保護されるべきものとされ手います。
さらに屋内の様子、車両のナンバープレート、洗濯物や生活状況を推測できる私物も保護の対象となる可能性があります。
肖像権侵害とは
承諾もないのに、みだりに自己の容貌や姿態を撮影・公開されない人格的な権利を有するとされています。
受忍限度を超えて撮影・公開される場合は肖像権の侵害となる者とされます。
ただし公共の場において、普通の服装・態度の人を撮影・公開することは受忍限度内として肖像権侵害とはならない場合が多いようです。しかし、この場合でも事例ごとの個別判断となっています。
ドローン映像の公開に関する注意点
プライバシー侵害、肖像権侵害については個別具体的な判断であるため、一定の法的リスクが生じることは避けられません。そのようなことを理解した上で、人権侵害をしないための配慮をする必要があります。
まずは撮影される人の承諾を得ることです。
同意を得られない場合には、
①住宅地にカメラを向けないようにするなどの配慮をします。
住宅にカメラを向けない、住宅にズーム機能を向けない、高層マンションなどで、住居にカメラを向けないといったことです。
また、リアルタイムでの配信は、ぼかしを入れるなどの配慮が出来ないのでしないことです。
②プライバシー侵害や肖像権の侵害となる可能性がある場合には、削除やぼかしを入れるなどの配慮をする。
以上の点を守る必要があります。
おわりに
ドローンの使用が今後一層、多面的・多角的に使用されることが予想されています。
特にドローンによる撮影・公開は、今まで見たこともないアングルから素晴らしい映像を多くの人が楽しむことができます。
しかし、その映像によって人権侵害が発生しないように、ドローンの撮影・公開を行う際には十分な配慮をする必要があります。