はじめに
犬は単なる愛玩動物ではない伴侶動物として人の生活により重要な意味のある役割を果たしています。家族の一員として日常生活を共に行動することが普通になって来ている昨今、犬と共に受け入れる飲食店が数多く登場しています。また、様々な事情から犬と共に生活が出来ない愛好家やアニマルセラピーのために、犬との触れ合いを提供する場所が設けられたりしてきています。
「ドッグカフェ」と「犬カフェ」
きちんとした定義があるわけではありませんが「ドッグカフェ」は自分が飼っている犬と一緒に入店できるカフェ、「犬カフェ」は自分で犬を飼っていないけれども、お店の犬と触れ合うことができるカフェということのようです。
運営形態が違うので、それぞれのカフェを経営する場合には必要な許可要件が違ってきます。
「ドッグカフェ」
食事を提供するなどの飲食店として経営する場合、飲食店営業許可の取得が必要ですが、動物に関する資格等は必要ありません。
ただし、動物の入店を前提としているので厳格な衛生管理が求められています。
愛知県健康福祉部生活衛生課が『いわゆる「ドッグカフェ」に対する衛生指導要領』を作成しています。
それによると、次のような内容のものを食品の衛生確保を図ることを目的に、保健所の指導指針として愛知県が示しています。
《参考》https://www.pref.aichi.jp/eisei/webpress_dogcafe.html
○ いわゆる「ドッグカフェ」である旨を掲示し、次の設備を設置すること。
・ 調理場・客席間の区画
・ 客席内に手洗い設備
・ 愛がん動物用食事の調理等を行う設備及び愛がん動物専用の食器の洗浄設備
○ 愛がん動物に食器、椅子・机等に触れる等の非衛生的な行為をさせないこと。
○ 利用客はブラッシングを行わないこと。
○ 食品取扱者は愛がん動物に触れないこと。
○ 営業許可申請書にいわゆる「ドッグカフェ」である旨を記載すること。
ドッグカフェを開業するにあたっては、衛生確保を図るために施設設備や衛生措置に関する指導があるので、保健所との事前相談が必要となります。
開業までの届出
保健所への届出
・営業許可申請書
・食品衛生責任者設置届
・営業設備の図面などの概要
・給水関係の書面 等
消防署への届出
・防火管理者選任届(座席数と従業員を合計した収容人数が30人を超える場合)
・防火対象物使用開始届出書
・消防設備設置届出
・火を使う設備の設置届 等
保健所・消防署への届を怠ると、営業停止や罰金といった処分を受ける場合があります。また、深夜営業など警察に届けなければならない場合もあります。
食品衛生責任者とは
営業者若しくは従業員のうち1名を食品衛生責任者として配置する必要があり、都道府県で実施されている「食品衛生責任者養成講習会」を1日受講すると資格を得られます。
ただし、次のいずれかに該当する人は受講が免除されます。
・食品衛生監視員又は食品衛生管理者の資格を取得するための要件を満たす者
・栄養士
・調理師
・製菓衛生師
・食鳥処理衛生管理者
・船舶料理士
・すでに他の都道府県等において責任者の資格を取得している者
「犬カフェ」
猫カフェのような形態で、お店が飼っている犬と触れ合うことができる場所です。犬によるアニマルセラピーといった目的の場所もあるようです。
名称としては「犬カフェ」とか「わんこカフェ」とか、きちんとした定義があるわけではありません。
犬と触れ合うので、動物取扱責任者の資格者を専任で1名置き、第1種動物取扱業(展示)の許可・登録が必要です。
人の飲食を伴う場合は飲食業の許可を必要とします。
動物取扱責任者とは
専属の常勤職員のうち、業務を適正に営むために十分な技術的能力及び専門的な知識経験を有する者として、一定の要件を満たした者です。
資格要件としては次のようになっています。
・獣医師(国家資格 農林水産省所管)
・資格(専門性を有する社団法人等の試験に合格している)及び実務経験(第一種動物取扱業者で6ヶ月以上の実務経験がある)
・卒業(獣医学、動物看護学、畜産学などを学ぶ大学、専門学校などの教育機関を卒業している)及び実務経験(第一種動物取扱業者で6ヶ月以上の実務経験がある)
第1種動物取扱業(展示)とは
動物を見せる業(動物とのふれあいの提供を含む)
動物愛護管理法に基づき、第一種動物取扱業(動物とのふれあいの提供を含む、動物を見せる業)を営む者は、事業所・業種ごとに都道府県知事または政令指定都市の長の登録が必要です。
また、動物の管理や飼養施設の基準を守ることが義務づけられています。
おわりに
厳密な定義はありませんが、「ドッグカフェ」は自分の犬を同伴して飲食ができる場所、「犬カフェ」は店が用意している犬と触れ合うことができる場所ということのようです。
それぞれ運営形態が違うので、営業をしようとする場合には、衛生管理や動物の飼育管理といったことから違った許可要件が必要になってきます。
伴侶としての動物を扱う業者には、人にも動物にもきちんとした配慮を求められています。