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空き家対策特別措置法

はじめに

適正に管理されていない空き家が周辺住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしていることから、2014(平成26)年に議員立法によって「空家等対策の推進に関する特別措置法」が制定されました。

 

第1条 この法律は、適切な管理が行われていない空家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしていることに鑑み、地域住民の生命、身体又は財産を保護するとともに、その生活環境の保全を図り、あわせて空家等の活用を促進するため、空家等に関する施策に関し、国による基本指針の策定、市町村による空家等対策計画の作成その他の空家等に関する施策を推進するために必要な事項を定めることにより、空家等に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって公共の福祉の増進と地域の振興に寄与することを目的とする。

 

空家の定義

空家特措法第2条で、所謂、空き家を「空家等」と「特定空家等」に分類しています。

「空家等」とは、年間を通して住宅としての使用実態のないものをいいます。

「特定空家等」とは、①倒壊してしまうなど、保安上危険のある状態、②衛生上有害な状態、③景観を損なっている状態、④周辺の生活環境を維持するために放置することが不適切である状態、といった空き家のことです。

 

第2条 この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。

2 この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。

 

所有者責任

第一義的には空き家の所有者の責任において適切な管理をしなければなりません。

 

第3条 空家等の所有者又は管理者は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるものとする。

 

市町村の役割

経済的な事情のある空き家の所有者が管理責任を全うできない場合、所有者の第一義的な責任を前提にしながらも、住民に最も身近で、個別の空き家の状況を把握することが可能な各市町村が、地域の実情に応じて対策を実施することが重要とされています。

①空家等対策計画

各市町村は国の基本方針に即して、第6条2項に定められた空家等対策計画を作ります。

一 空家等に関する対策の対象とする地区及び対象とする空家等の種類その他の空家等に関する対策に関する基本的な方針

二 計画期間

三 空家等の調査に関する事項

四 所有者等による空家等の適切な管理の促進に関する事項

五 空家等及び除却した空家等に係る跡地(以下「空家等の跡地」という。)の活用の促進に関する事項

六 特定空家等に対する措置(第十四条第一項の規定による助言若しくは指導、同条第二項の規定による勧告、同条第三項の規定による命令又は同条第九項若しくは第十項の規定による代執行をいう。以下同じ。)その他の特定空家等への対処に関する事項

七 住民等からの空家等に関する相談への対応に関する事項

八 空家等に関する対策の実施体制に関する事項

九 その他空家等に関する対策の実施に関し必要な事項

 

②協議会の設置

第7条に基づき、市町村長、地域住民、議会議員、学識経験者等で構成された協議会を設置します。

協議会において空家等対策計画の作成・変更・実施に関する協議が行われます。

 

立ち入り調査

市町村長は空家の所有者等に関する調査及び空家への立ち入り調査をすることができます。

 

特定空家等に対する措置

市町村長は特定空家等の所有者等に対して次の措置をすることができます。

①助言又は私道として、除去、修繕、立木竹の伐採等の必要な措置をとること。

②改善されないと認められる時に勧告をすること。

③勧告に係わる措置をとしなかったときは、命令をすること。

④行政代執行法に基づく代執行をすること。

 

2019(平成31)年3月までの累計で、助言・指導15,586件、勧告922件、命令111件、代執行165件となっています。

市町村長による命令に従わなかった場合には50万円以下の過料、立ち入り調査を拒否したり妨害したりした場合は20万円以下の過料が科されます。

また、法に基づく代執行による建物解体のための費用等は、当然のことですが所有者に請求されます。

 

税制上の措置

空家対策として、次のような税制上の措置がとられることになります。

①固定資産税は、住宅の敷地部分について200㎡以下の部分は6分の1、200㎡を超える部分については3分の1に減額される特例があります。しかし、特定空家等になるとこの特例が適用されないために固定資産税が高くなります。

②相続による空き家又は建物除去後の更地を譲渡した場合、譲渡所得から3000万円が特別控除されます。

 

おわりに

空き家は、過疎地だけでなく都市部においても広く発生しています。

一方では新築住宅が次々と建設されており、人口が減少する時代を迎えて、空き家が増加する傾向は続くと考えられます。

空き家を壊してしまうだけではなく、有効に利用・活用するためにどうすればよいかを、地域全体の街づくりの問題として考えなければならない時代になったのではないでしょうか。

 

《参考》

空家等対策の推進に関する特別措置法の概要」環境省

mat02-5 (env.go.jp)