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親族が後見人となるポイント

はじめに

最高裁判所家庭局の統計によると、2021(令和3)年に親族が成年後見人等となっているのは19,8%であり、親族以外が弁護士・司法書士等といった親族以外が80,2%を占めています。

これは、親族間の対立や財産的な不正が問題になることから親族以外の第三者である専門職が多く成年後見人等に就任しているようです。

しかし、親族等が成年後見人等につけないことによって成年後見制度の利用が低迷しているのではないかということで、2019(平成31)年3月、厚生労働省の第2回成年後見制度利用促進専門家会議にて、最高裁判所が専門職団体との間で後見人選任のあり方について意見交換をした際に、身近な支援者を後見人に選任することが望ましいという後見人等の選任の基本的な考え方が示されました。

成年後見制度は、本人の財産を本人のために維持管理することが原則なので、親族だからと言って希望すれば成年後見人等になれるとは限りません。

あくまでも成年後見人等を選任するのは裁判所であることを忘れてはなりません。

【1】親族が成年後見人等になるためのポイント

①本人財産の管理が難しくないこと

アパート・駐車場といった多数の不動産、多額の借金や預貯金・有価証券がある場合は、親族ではなく第三者の専門職等が成年後見人に選任される可能性が高いと考えられます。しかし、少ししか資産がない場合(300万円ぐらいか?)には第三者を選任する必要はありません。

②管理する金融資産がある場合(およそ1,000万円~)

(ア)親族が後見人等になったとしても、専門職を後見監督人として選任されることがあります。親族後見人等は後見監督人に事務報告をし、報酬を支払うことになります。

(イ)後見監督人を付けない場合は、本人の財産を保全するために後見制度支援信託または後見制度支援預金を求められます。

例えば、3,000万円の預金がある場合、2,500万円を特別な口座に保管しておき、家庭裁判所の指示書によって払い戻しされるものです。家庭裁判所の管理下にあるので横領されるリスクがなくなるという仕組みです。残りの500万円は、本人の生活資金として親族後見人が管理します。

③他の親族の同意が必要

家庭裁判所への申立ての書類に、他の親族の意見を記すことになります。

他の親族からの反対があると、中立的な第三者が後見人等となる傾向にあります。

④後見人候補者に問題がないこと

親族が後見人候補者を希望する場合、家庭裁判所への申立ての書類に後見人候補者の年齢・資産・経歴・家族関係等の状況を記します。本人の財産目録を提出し、本人の財産を適切に管理しているかどうか審査されます。

【2】最高裁のデータより

最高裁判所事務総局家庭局が、2021(令和3)年1月~12月にかけての、成年後見に関する概況をまとめています。

裁判所が認容して終結した後見・保佐・補助開始の審判(36,904件)のうち、親族が候補者となっていたのは23,9%(8,820件)です。そして実際に親族が後見人等となっているのは後見人等全体の19,8%(7,852件)となっています。

そもそも申立てをする際に、後見人等候補者を親族にしておくのが全体の20%少ししかありません。しかし、その親族候補者の大部分が後見人等として選任されているようです。

要件が満たされれば、親族が後見人等に選任される可能性が高いのではないでしょうか。

おわりに

最高裁判所の見解によって、親族が後見人等になる可能性が高まってきています。ただし上記①~④の要件等をクリアした上で、家庭裁判所による判断があるということなので、必ず親族が後見人等になれるというわけではありません。