はじめに
行政書士に限らず、成年後見制度について相談された場合には、民法をはじめとする関連知識を十分に有していることが必要です。
その上で、本人の利益を最優先に考えることが大切です。
制度利用の判断
成年後見制度を利用しようとする場合には、本人の利益となる財産管理及び身上監護に寄与するかどうかを見極めることが重要です。
成年後見制度だけが、本人の利益にとっての解決策ではありません。
他の福祉制度や社会資源の活用によっても本人の利益を保護することも可能なので、成年後見制度ありきではなく、様々な方策を十分に検討することが大切です。
家族・親族からの相談
家族や親族からの相談があった場合も、十分に検討する必要があります。
◇家族・親族が「本人は判断力が欠けている、不十分である。」と言っても、本人と直接、複数回、面談した上で、制度の必要性を検討してみる。
◇家族・親族の目的が本人財産の搾取といった可能性も考えられます。このため、後見申し立てをする場合、成年後見人等に選任されるかどうかは家庭裁判所によって判断されるものであり、家族・親族が成年後見人等に選任されるとは限らないことを十分に理解してもらうことが大切です。
◇遺産分割がある場合、後見人等は法定相続分を確保し、本人の利益を守ります。もし、後見人等が相続人であった場合には、後見人又は利害関係人から裁判所に特別代理人の選任の申立てが必要となります。
◇親族間に不和がある場合、一方が後見人等になろうとして申立てをしようとする。これによって更に不和が悪化する場合があります。
◇成年後見制度の利用は、消費者トラブルの予防には有効ですが、被害の回復は費用対効果を考えても難しいかもしれません。そもそも本人に被害者意識がない場合もあります。
◇一度、後見人等に就任すれば、本人が死亡するまでの間は原則として辞任しないことを理解してもらう。
本人からの相談
任意後見又は補助・保佐の場合、本人自らが相談者になることがあります。
◇本人の将来への不安や現状への不満からの相談だと考えられるので、本人の悩みや希望を十分に聴いて理解することが大切です。その上で、任意後見契約等について説明をしていきます。
◇事実行為や一審専属的な事項については後見人等の職務ではないことを十分に説明する。
◇本人の判断能力について、十分に見極めておく必要があります。
おわりに
成年後見制度を利用する場合、本人や家族・親族の状況をよく見定めた上で、進める必要があるようです。
何が本人にとって最善なのかを常に念頭に置いたうえで、成年後見制度を選択肢の一つとして利用することが大切だと思います。