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生活保護と成年後見人等について

はじめに

今後、高齢者人口の増加が予想される状況にあって、低年金・無年金者も増加すると考えられています。このため高齢者の生活保護受給者が増えることが見込まれ、そのような高齢者を支援する成年後見人等が選任されるケースの増加も予想されます。

生活保護制度がどのようなものであり、成年後見人等がどのような役割を担っていくのかをみていきます。

【1】生活保護制度の目的

1950(昭和25)年に成立した生活保護法によると、生活困窮者の健康で文化的な最低限度の生活を保障することと、自立の助長を目的としています。

第1条 この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。

【2】保護の種類

保護の種類については、次の8項目があります。

第11条 保護の種類は、次のとおりとする。

一 生活扶助

二 教育扶助

三 住宅扶助

四 医療扶助

五 介護扶助

六 出産扶助

七 生業扶助

八 葬祭扶助

【3】相談及び実施機関

本人が現在居住している地域の福祉事務所の生活保護担当に相談します。

【4】生活保護の要件

生活保護の要件は世帯単位で検討され、厚生労働大臣が定める最低生活費に本人の収入が満たされていない場合、その差額が給付されることになります。

次の項目が、本人の収入として検討されます。

(ア)資産…現金、預貯金、有価証券、不動産収入等

(イ)能力…働く能力の活用

(ウ)活用できるもの…生活保護以外の年金等の社会保障制度

(エ)扶養義務者からの援助

【5】手続き

(ア)申請者

本人、扶養義務者、同居の親族(成年後見人等は申請できません)

(イ)手続き

事前相談→申請書提出→本人調査→決定→支給

*却下された場合、境界層該当証明書が発行されることがあります。この証明によって介護負担限度額認定証の交付がなされ、食費等の減額を受けることができます。

【6】成年後見人等が支給決定後にすること

(ア)国民年金

本人が60歳以下の場合、保険料支払い免除の手続きをすること

(イ)健康保険

医療費は生活保護費から支払われるので本人負担はなくなります。このため被保険者証を変換します。

(ウ)公共料金

NHK受信料、水道料金の減免手続きを行います。

(エ)介護負担限度額認定証の交付申請

介護保険施設に入所入院している場合、居住費や食費が減額されます。

【7】成年後見人の役割

(ア)収入申告書の提出

年金受給額、相続財産取得等について申告します。

(イ)生活保護廃止の届出

特別な収入によって生活保護が廃止となった場合に届け出ます。保護費を返還しなければならない場合は家庭裁判所に連絡します。

(ウ)本人死亡の報告

死亡について福祉事務所担当者に連絡し、諸手続きをします。関わる親族がいない場合、福祉事務所担当者と連絡を取りながら、葬祭扶助により葬儀を執り行います。

葬祭扶助として、葬儀を行うにあたって必要最低限の費用とされているのは①遺体搬送料②死亡診断書等の文書作成料③ドライアイス等の遺体保存にかかる費用④棺代⑤火葬料⑥骨壺代です。

おわりに

成年後見人等として生活保護の被保護者と関わる場合、多くは高齢の被保護者と考えられます。様々な事情で生活保護を受けられていることと考えられますので、成年後見人等として本人と関わる場合には、尊厳をもって接することが大切だと思います。