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知的障害について

はじめに

知的障害のある人は109万4,000人とされています。(令和2年、障害者白書)

知的障害のある人は、親亡き後にどうするかということがあり、なかなか解決しない大きな問題とされてきました。このような悩ましい問題を解決するための一助となるのが成年後見制度の活用です。

このため成年後見人として、知的障害とはどのようなものであるかを理解することは重要です。

【1】知的障害とは

知的障害者に関しては知的障害者福祉法がありますが、知的障害者の定義があるわけではなく、社会通念上知的障害と考えられるという解釈がなされています。

一般的には、読み書き、計算などの知的機能に制約があること、その場に応じた行動ができないこと、話の内容が理解できなかったりコミュニケーションがうまく取れないこと、抽象的論理的理解が十分にできないこと、他の人に誘導されやすいこと等の特徴があるとされています。

【2】知的障害の目安

知的障害の認定はIQが指標とされており、IQ75以下を知的障害と位置づけています。

IQとは精神年齢÷暦年齢×100で産出されます。

都道府県によって違いがありますが、軽度(51~75)中度(36~50)重度(21~35)最重度(20~)と区分されているようです。

1973年より療育手帳制度が始められており、IQの区分によって判定され、交付されます。

【3】知的障害者の特性

自閉症

脳の機能障害が原因とされ、3歳ごろまでに症状が現れます。こだわりが強い、環境に適応しにくい、コミュニケーションが苦手といった状態が生じます。

◇強度行動障害

相手のことを理解することが困難で、対人関係のトラブルが多く生じます。多動、徘徊、器物損壊、奇声、自傷といった行動が見られます。

注意欠陥多動性障害

他の刺激に気を取られやすく、常に手足が動いていたりおしゃべりしたりしている。衝動性があり、傾聴したり順番を待つことができない。

アスペルガー症候群

冗談が通じない、不器用、感覚過敏、こだわりが強い等の状態が見られる。

【4】知的障害者への合理的配慮

①障害者権利条約〈2014(平成26)年に批准〉

条約において、平等を促進し、差別を無くすために「合理的配慮が提供されること」とされています。

②合理的配慮とは

障害者の平等や人権を確保するために必要な「適当な変更及び調整」で「特定の場合において必要」なものであり「均衡を失し」たり「過度の負担を課さない」ものとされています。

③具体的には

◇障害のある人の理解力や行動特性といったものを適切に知った上で、適正な評価をします。

◇規則正しい生活へのサポートをします。

◇作業手順、スケジュール、場所等について分かりやすい環境を整えます。

【5】関係法令

◇障害者差別解消法

障害を理由とする差別の解消を目的とし、差別的取り扱いや合理的配慮の不提供を禁止することが定められています。

◇障害者虐待防止法

国や地方公共団体、障害者福祉施設従事者、使用者などに虐待防止のための責務を課すとともに、虐待についての通報義務を課しています。

おわりに

知的障害のある人の親にとっては、自分が死んだ後に子どもがどうなるのかは切実な問題です。様々な支援が行われてはいますが、長期的な視点での支援を継続することが大切です。成年後見制度によって、知的障害者への支援ができれば「親亡き後」問題の解決に向けた一助になると思います。