MENU

成年後見制度の概要

【Ⅰ】成年後見制度創設の経緯

旧制度

現在の制度が創設される前は、禁治産・準禁治産制度でした。この制度は、言葉に差別的な表現があるため負のイメージがありました。また、資格制限が数多くあり支援に柔軟性が欠け、利用しにくいといわれていました。宣告を受けると戸籍に記載されてもいました。

新制度

2000(平成12)年に、本人の自己決定権を尊重する理念のもと、成年後見制度が施行されました。民法に基づく法定後見と、任意後見契約に関する法律に基づく任意後見とがあります。

法定後見制度においては、後見・保佐に加えて補助という新しい類型が創設されました。資格制限が減少されると共に、柔軟に支援が出来るようにしています。

後見登記制度がつくられて、戸籍への記載が無くなりました。

【Ⅱ】市民後見人の育成

高齢化社会であり認知症などの高齢者支援に繋がる成年後見制度の需要が高まることが予想されているにも関わらず、利用者数が伸び悩んでいます。

このため2008(平成28)年、成年後見制度利用促進法が制定され、各市町村においては担い手としての市民後見人の育成が図られています。

【Ⅲ】成年後見制度とは

判断能力が衰えた後に利用するのが法定後見制度、判断能力が衰える前に利用するのが任意後見制度です。判断能力が衰える前か後かで利用する制度が違います。

【Ⅳ】法定後見人制度について

法定後見には後見・保佐・補助の3つの類型があります。

①後見について

成年被後見人…後見を受ける人で、常に判断能力を欠く人です。

成年後見人…日常生活に関する行為を除いた、すべての法律行為を代理して行うことができます。

ただし、次の行為は出来ません。

(ア)サービスを直接提供する事実行為

料理をする、入浴介助をする、部屋の掃除をするといった日常生活の世話のことです。

(イ)本人にしかできない法律行為

婚姻、離縁、養子縁組、遺言作成等のことです。

(ウ)日常生活で行う法律行為

スーパーで日用品を購入する等のことです。

(エ)その他の本人の行為

本人が入院・入所する時の保証人、本人が手術を受ける際の同意、本人の債務についての保証などです。自分が自分の保証人にはなれないということです。

②保佐について

被保佐人…精神上の障害によって判断能力が著しく不十分となった人で、保佐人の支援を受けます。日常生活での買い物などは自分の判断で行えますが、重要な財産である家や土地といった不動産、車などの高額な売買、お金の貸し借り、保証人になるといった場合、常に誰かの手助けを必要とする人が対象となります。

保佐人…民法13条1項に規定されている重要な行為について同意権・取消権が付与されています。代理権は持っていませんが、家庭裁判所が認めた特定の法律行為については代理権を有することができます。

第13条 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

一 元本を領収し、又は利用すること。

二 借財又は保証をすること。

三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。

四 訴訟行為をすること。

五 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。

六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。

七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。

八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。

九 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。

十 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。

③補助について

被補助人…判断能力が不十分で、後見や保佐より軽度の人のことです。自分で契約などは締結できますが、判断能力が不十分なので適切な判断が下せるかどうか心配なので、誰かに手助けしてもらう方が良い状態にある人です。

補助人…家庭裁判所で行われる審判では、補助人を選任するだけです。補助人にどのような権限を与えるかは、本人の意思によって別に「同意権付与の審判」「代理権付与の審判」をする必要があります。同意権の範囲は民法第13条第1項で定められている内容の範囲内に限定されます。審判で認められれば補助人が行うことができます。

ただし、日常行為に関する行為については、たとえ同意権が与えられている補助人であっても取り消すことはできません。

【Ⅴ】成年後見人等について

①選任について

成年後見人等は家庭裁判所による審判の手続きによって選任されます。特に資格は必要ありませんが、成年後見人等を解任された人や破産者などはなれません。

本人の状況によっては複数の成年後見人等がせんにんされることがあります。また、社会福祉法人公益法人といった法人が選任されることもあります。

②義務

本人の意思を尊重する意思尊重義務と本人の身体精神生活を配慮する身体配慮義務があります。

家庭裁判所だけでなく成年後見監督人による監督を受けます。

③審判確定後の職務

家庭裁判所において成年後見人等の審判が確定したら、成年後見人等の確認を求められた時のために法務局に登記をします。

家庭裁判所に対して、本人の財産を特定したうえで財産目録と年間収支予定表を作成して、最初の報告をします。その後も、毎年一定の時期に後見事務に関する報告をしなければならないことになっています。