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「代行」から「代理」へ~平成13年の行政書士法改正~

 

はじめに

平成13年の法改正により、代理権が法文に明記されたことは行政書士にとっては画期的なことでした。長年にわたる先人のご苦労の賜物であります。

法改正によって行政書士の役割がどう変わったのかを検討してみました。

 

法改正前の条文

第一条 この法律は、行政書士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、行政に関する手続の円滑な実施に寄与し、国民の利便に資することを目的とする。

第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報 酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。

2 行政書士は、前項の書類の作成であっても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。

第一条の三 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、同条の規定により行政書士が作成することができる書類を官公署に提出する手続を代わって行い、又は当該書類の作成について相談に応ずることを業とすることができる。

 

法改正後の条文

第一条 この法律は、行政書士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、行政に関する手続の円滑な実施に寄与し、あわせて国民の利便に資することを目的とする。

第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。

2 行政書士は、前項の書類の作成であっても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。

第一条の三 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。

 一 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続について代理すること。

 二 前条の規定により行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。

 三 前条の規定により行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。

 

法改正の意味

①第1条に「あわせて」が追加された意味

行政書士の業務は、「官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成する」ことが業務とされていますが、改正前は、「権利義務又は事実証明に関する書類」の作成が第1条の目的に明確に示されてないのではないかということでした。

「あわせてを」追加することで、私人間の権利義務や事実証明に関する書類の作成も行政書士が担っている役割であることを明示することになります。

 

②第1条の3第1号

改正前は、書類を官公署に提出する手続きを代わって行うだけであり、字句の訂正など書類の訂正が必要な場合は、依頼者の意思を確認しなければなりませんでした。

改正後は、自ら代理人として訂正等を行うことができ、行政手続きの円滑な実施が促進されることになり、国民にとっても利便性が向上することとなります。

 

③第1条の3第2号

今回の改正により新たに規定されました。

「契約その他に関する書類を代理人として作成すること」とは、本人の代理人として相手方に意思表示をしたことは、本人に法的効果が帰属するということです。

契約締結代理業務が規定され、行政書士が契約書に代理人として署名し、文言の修正等を行うことができるというものです。

契約締結代理業務については、弁護士法72条の非弁活動についての議論が行われてきたところですが、争訟性の無い法律事務についてはあたらないとされているようです。

 

おわりに

私法上の代理が法文に規定されているのは行政書士、弁護士、弁理士だけのようです。「代理」という法律上の言葉の重みは、大きいですね。

第1条に「あわせて」を追加し、第1条の3第2号で代理人の規定を付け加えたことは、私人間の権利義務や事実証明に関する書類の作成について、行政書士が大きな役割を担っていることを示すものだと思いました。

 

参考

https://xn--zqs55dw5mowbwuz214a.xn--tckwe/sub/sub-2.html

https://www.do-gyosei.or.jp/kaiho/dokaiho247.pdf